カスタマーサクセスという職種や仕事がいま世の中でたくさん募集されています。カスタマーサクセスに従事する者としてとても嬉しい一方、
「カスタマーサクセスって仕事は辛くない?やめておいた方が良い?」
と気になる方も多いんじゃないでしょうか!
結論、私自身は営業・セールス職よりカスタマーサクセスになってよかったと感じています。
しかし、カスタマーサクセスをしっかりと実行している会社に就職することが何よりも大事です。あまり良くない会社に入ると、カスタマーサクセスをやってても、ただ辛くて苦労しますし、キャリアアップに繋がる経験を積めないという事態に陥ります。
この記事のゴール:
カスタマーサクセスとして転職した場合に、辛くなる・やめたくなる会社のパターンを理解する!
この記事では、カスタマーサクセスの経験者の観点から、「辛くなる・やめたくなる」会社のあるある状況をまとめます。転職したとしても、ちゃんとしたカスタマーサクセスを経験できる会社かどうかを見極めるポイントを教えます。
こんな会社のカスタマーサクセスは辛いからやめとけ!
- プロダクトが課題を解決できていない
- 開発体制が弱く、エンジニアが辞める
- 解約率(チャーンレート)がかなり高い
- 会社や経営陣がカスタマーサクセスについて理解してない
- 会社の雰囲気として、顧客よりも自社の目先の利益を優先する
- カスタマーサクセスに投資をしない(人を採用しようとしない)
- とりあえず「カスタマーサクセス」を名乗っている
「こういう会社はカスタマーサクセスをやってても辛くなりやすい、苦労しやすい」という例を上げていきます。
ここに書いてあることは割と真面目に注意した方が良い点です。どんなに見栄えが良い会社でも、下記の項目に当てはまるものがあったら、ちゃんとその理由を聞いたり探ったりしてみましょう。
プロダクトが課題を解決できてない
カスタマーサクセスに何よりも重要なのは「商品・プロダクト」です。そもそものプロダクトが顧客の課題を解決できていない、契約はあっても支持されていない、使い込まれていない、という場合は注意しましょう。
「商品・プロダクト」が顧客に使われない最大の理由が「プロダクトが顧客のニーズにフィットしていないことが場合、どんなにカスタマーサクセスをやっても「暖簾(のれん)に腕押し」状態になります。
さらには、プロダクトがまだ開発中でリリースされてない中で、カスタマーサクセスを募集する会社もあるようです。
確かにやりがいはあるかもしれないですが、いつまで経ってもプロダクトがリリースされず顧客がつかない、社長は営業に奔走していてサクセスのことは考えてない、なんてことも起こるので気をつけてください。
開発体制が弱く、エンジニアが辞める
こちらもプロダクト関連ですが、開発体制が脆弱だったり、開発環境に投資されずにエンジニアが辞めていっている場合は要注意です。中長期的な観点でのカスタマーサクセスには、商品・プロダクトの開発力が非常に重要になります。
どんなにカスタマーサクセスができていても、商品・プロダクトが改善されない場合には限界があります。商品・プロダクトを改善するためのエンジニアがいなくなるということは、危機的状況であると認識しましょう。
SaaSやサブスクリプションなのに「解約率(チャーンレート)」がかなり高い
上記のプロダクトの問題が中心となり、他の様々な要因も相まって最終的に結果としてあらわれてくるのが「解約率(チャーンレート)」の高さです。解約率が年間10%以上(月間で1.5%〜2%)ある場合は少し注意した方が良いです。
この解約率が年間10%以上ある理由や要因をまず聞いたり探ったりした方が良いです。なぜなら、解約率が年間10%以上あると新規顧客を積み上げていっても、いつか顧客増加がマイナスに転じるからです。(ボトルに水を入れても穴から水が漏れている状態です。)
会社としても自分個人としても、解約率が中長期的に年間で5%前後(月間1%弱以内)におさまる見込みを立てられるのであれば、カスタマーサクセスのやりがいがあると思います。
会社や経営陣がカスタマーサクセスについて理解してない
会社や経営陣が営業・セールス色強めの組織の場合、この点が強く出やすいです。新規獲得の件数・売上を第一優先として、とにかくどんなお客さんでも契約してこれるセールス力がある会社ほど厄介になります。
カスタマーサクセスは、顧客の課題とプロダクトの解決力の間(ギャップ)を埋める役割とも言えます。最初の顧客獲得の段階で、明らかに自社の商品・プロダクトの対象ではない顧客も「期待だけ」で契約してきてしまうと、その後のカスタマーサクセスがかなり困難になったり、労力が無駄にかかったりします。
そういう状況になると、本来手を当てるべき顧客にも手を当てられなくなり、残ってくれるはずの顧客も価値をあまり実感できずに解約するという問題も生んでいきます。
そして「せっかく獲得した顧客が解約しているのはカスタマーサクセスの責任だ」という方向に持っていかれるともうカスタマーサクセスは死んだも同然です。
会社の雰囲気として、顧客よりも自社の目先の利益を優先する
これは会社のフェーズにもよりますが、会社の雰囲気として「顧客」のことや「体験」のことを考えている会社なのか、もしくは「とにかく売上!」(特に後先考えない目先の売上)と考える会社なのかです。
どんな会社でも、顧客体験・顧客ロイヤルティを失うような施策を考案したり、実施してしまうことがあります。その際に、カスタマーサクセスの意見を聞いてもらえる環境なのか。一度冷静になって議論できる機会があるのか。経営陣に少なくとも声を届けられるのかはとても大事です。
何も耳を傾けてくれなくて、ただ決定事項として強引な売上獲得施策をやる環境というのはなかなか辛い状況になってしまいます。
カスタマーサクセスに投資をしない(人を採用しようとしない)
カスタマーサクセス部門が、明らかに顧客数やそのほかの部門(特にセールス)と比較して、小さい場合は要注意です。カスタマーサクセスを「プロフィットセンター」ではなく、「コストセンター」として認識していたりすると、「カスタマーサクセス」部門を小さくしておこうという考えも働くかもしれません。(これから人を増やしていこうとしているのであれば話は別です。)
この場合はカスタマーサクセスと名前がついていても「カスタマーサクセス」ではないかもしれません。カスタマーサクセスの実現には実はそれなりの人が必要です。
とりあえず「カスタマーサクセス」を名乗っている
「なんちゃってカスタマーサクセス」になっている会社は意外と多いと耳にします。「カスタマーサクセス」となっていても、全くカスタマーサクセスを勉強したり実践するつもりのない人が部長になっていたり、「カスタマーサポート」的な業務しかなかったり、単純な「継続契約」をお願いするだけの仕事だったり…。
このような会社は「カスタマーサクセス」というトレンドに乗って人を採用しようとしてるだけかもしれません。
カスタマーサクセスであるあるの辛さや苦労
ここまで「要注意」なポイントを述べてきましたが、ここからは、カスタマーサクセスをやってると感じる可能性がある「辛さ」や「苦労」です。どんなに良い会社でも起こり得ることでもありますし、対応・対策次第で解決可能なものなので必ずしも悪いわけではありません。
顧客がなかなか動いてくれない
どんなカスタマーサクセスでも一度や二度感じたことがあるのではないでしょうか。自社の商品・サービスをすでに契約してくれる顧客だとしても、「顧客を動かす」ということは簡単なことではありません。
また顧客のタイプは様々なので必ず自分が得意ではない顧客もいたりします。そういう時には、チーム内で相談したりヘルプを貰えたりする環境があるかどうかが大切になります。
全てマンパワーでなんとかしようとする
カスタマーサクセスではやるべきことがたくさん出てきます。また顧客数が増える会社であれば尚更です。それは顧客と直接向き合うこと以外に、様々な事務業務や調整作業や集計作業が出たりします。全ての業務を1人のカスタマーサクセスマネージャーが担うとすると、かなり大変な仕事量になりますし、その割に顧客に対する時間を割くことができていないということも起こります。
会社の考え方として、カスタマーサクセスのメンバーが顧客対応に集中できるようにしたり、顧客管理やメール配信などのツールを正しく導入して、自動化できることは自動化をしていくというスタンスを持っているかがとても大切です。
やることが見えなくて何をすべきか分からない
これはスタートアップやカスタマーサクセスが初期段階のフェーズで起こりやすいことです。会社の中にもカスタマーサクセス経験者がいない状態で、何をしたら解約率が下がるのか、何を目標にしてどんなアクションをしていくべきなのかが全く見えないという状況です。
カオスな環境を楽しめる人であれば問題ないかもしれませんが、何か決まっていることがないと動けない人や不安になる人には向いてないフェーズです。
このような状況でも、カスタマーサクセスの経験者がいなかったとしても、カスタマーサクセスのメンバー1人1人が目の前の顧客に真摯に向き合うというスタンスを持っていたら、自ずと何をすべきかの答えは見えてくるはずです。チームみんながそういうスタンスを持っているかが大切です。
目標数字・KPIのプレッシャーがある
カスタマーサクセスの主な目標・指標としては、解約率・ARPU・NRRといったSaaSの経営指標が用いられます。しかし、1つ難しいのは、これらの指標には変数が多いということです。
これをカスタマーサクセスだけで追っていくケースがあるのですが、特に割と厳しめにKPI・数値管理がなされる場合プレッシャーを感じることがあるでしょう。カスタマーサクセスができる現実的なアクションは地道なもので時間が必要なことなので、それを踏まえた目標・KPI設定になっているかが大切になります。
役割や業務が細分化されて単調に感じる
これはある程度カスタマーサクセスが仕組み化されているフェーズの会社で起こり得ることです。目標がしっかりと設定されていたり、オペレーションもしっかりとできあがっている状態だからこそ、自分の業務がやや単調に感じることがあります。
ただすでにオペレーションが固まっていたとしても改善点はいくらでもありますし、カスタマーサクセスが洗練している会社ほどカスタマーサクセス内に様々な役割があったりもするので、社内の中でキャリアチェンジができる状態があれば解決できます。
プロダクトに不具合やバグが発生する
どんな会社でもプロダクトの大規模な不具合・バグの対応に発生することがあります。こういうときは、顧客への説明責任、クレーム対応などが必要になり、顧客対応がかなりハードになってきます。
誰のせい、誰の責任ということを争うのではなく、会社一丸となってこういう問題に対処・対応できるかどうかが大切です。
サービスやプロダクトを好きになれない
これは入社前に判断しましょう…
会社のことを知ることと同じくらい、どんなプロダクトで、どんな問題・課題を解決しているのか、長期で関わっても自分はそのサービスを好きでいられそうかをよくよく自分に問いかけましょう。
顧客に共感できない
カスタマーサクセスをやっていると色々なタイプの顧客と出会うことになります。その中でも、全体的に顧客に共感できないときがあるかもしれません。顧客に共感ができないと、カスタマーサクセスの仕事の力の入れどころもなかなか見えてこなくなります。
こういうときは、顧客のことや顧客の実態・顧客の感情や想いを深く理解できていないことが原因としてあるかもしれません。どんな顧客にもいろんな背景や事情があって自社のサービスやプロダクトを使ってくれています。そこが見えてくると、少しづつ顧客に共感できるようになるのではないでしょうか。
カスタマーサクセスが辛くない理想の会社
※どんな会社にも良い点と改善点があります。「良い環境だから入社した方が良い」という安直な考えを述べてるわけではありません。あくまで会社選びの視点の1つとして参考にしてもらえたら幸いです。また今回は組織内の特定の人との相性については割愛してないものとします。どんなに良い会社でも人の相性の問題は起こり得ますから。
まず最初に、「こういう会社でカスタマーサクセスに携われるとタメになるよ」という理想の状態から説明します。
- プロダクトが特定の顧客にしっかり支持されてる(顧客の課題を解決できている)
- サービスの解約率が低い
- サービスの契約数が積み上がっている
- CSメンバーが顧客のことを本当に考えている
- セールス、カスタマーサクセス、プロダクトの各チームのパワーバランスが公平
どんな業界のどんなフェーズの会社でも、まずこれらのことが揃っていたら、カスタマーサクセスはとてもやりがいがあると思います。これからカスタマーサクセスに転職してみたいと考えている方は、ぜひこれらのポイントをまず意識して企業を探してみてください。
商品・プロダクトが一番大事
カスタマーサクセスでできることはたくさんあります!
ですが、唯一どうしようもできないことがあります。
それは「商品・プロダクト開発」です。
もちろん、カスタマーサクセスとして、顧客の声を開発チームに届けたり、プロダクトへのフィードバックしたりすることは可能です。しかし、プロダクト開発はプロダクトチームにしかできません。
初期フェーズのプロダクトでも、初期フェーズを超えたプロダクトでも、顧客の課題をしっかりと解決できているか(ニーズにフィットしてるか)は、その後の成長に欠かせないものです。まずは少ない顧客でも良いのでしっかりと商品やプロダクトが支持されているかをチェックしましょう。
それがあれば、あとはマーケティングやセールスチームが正しく動くことで顧客数は純増していきますし、顧客数が増えたときの顧客体験を高めていくところにカスタマーサクセスのやりがいが生まれてきます。
カスタマーサクセスメンバーが顧客のことを常に考えているか
プロダクトの次に私が大事だと考える点は、その会社の「カスタマーサクセス」のメンバーが顧客のことを真摯に考えているかどうかです。
例えば、カスタマーサクセスだから「カスタマーサクセスについて考えていて、カスタマーサクセスを推進しています!」という場合は少し注意した方が良いです。カスタマーサクセスの表面的な手法ばかりを語るとかですね。
本当にカスタマーサクセスを体現できている会社は、逆説的ですが、表面的な手法としての「カスタマーサクセス」を意識しているわけではなく、まず何よりも目の前の顧客のことを考えています。目の前の顧客に真摯に向き合い、どうにか価値を提供していく試行錯誤・四苦八苦の末に、様々な役割や組織体制が生まれてくるのです。
そこで働いているメンバーが「カスタマーサクセス」ではなく「顧客」を先に語るかどうかはとても大事なポイントです。
カスタマーサクセス含めた各部門のパワーバランスが公平であること
カスタマーサクセスの肩身が狭い感じではなく、プロダクトやセールス・マーケと公平な立場にあることがとても重要です。カスタマーサクセスの立場や意見が、他の部と同じように尊重されている組織の方が、当たり前ですが、カスタマーサクセスを実行しやすいです。
具体的なポイントとしては、カスタマーサクセス部の人数を見ると少しわかります。他のセールスやプロダクトと比較して極端に少なくなっていないか。少ない場合はそれなりの理由があるか。ある意味、部門の人数はその部の力強さを表すことにもなります。
まとめ
いかがでしたか。どういう会社だとカスタマーサクセスが辛くなったり、苦労したりするかイメージが湧いたでしょうか。
ただし、スタートアップフェーズだとどんなに良いプロダクトがあっても様々な困難があります。それでも自分がカスタマーサクセスとしてその会社にジョインしたいかどうか。
ジョインしたいと思えるのなら、辛さや困難を受け入れる覚悟を持てば良いだけです。
ぜひ自分が挑戦してみたいと思うカスタマーサクセスを見つけてください。