カスタマーサクセス マネージャー(CSM)とは、カスタマーサクセスの職種・役割の1つです。Customer Success Manager が英語の語源になります。日本語では、カスタマーサクセスマネージャーとなりますが、長いので通常は「しーえすえむ」と発音します。
カスタマーサクセスの職種の中では最も基本的なポジションで、日本においても、カスタマーサクセスを実践する企業から非常に多くの求人が出ています。
この記事のゴール:
カスタマーサクセスマネージャーという職種を理解する
今回の記事では、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)とは何かについて分かりやすく解説します。「マネージャーという管理職でしょ」と思った方、まずは目次をご覧ください。
カスタマーサクセス マネージャー(CSM)とは、1社1社(1人1人)と伴走し、顧客のサクセスを実現させる人のこと
カスタマーサクセスマネージャーは、カスタマーサクセスの最前線に立ち、サービスやプロダクトを契約・利用してくれる顧客と直接コミュニケーションを取る担当になります。
多くの企業では、カスタマーサクセスマネージャーは自分の担当顧客を持つことが多いです。ビジネスモデルにもよりますが、およそ数十〜100ほどの顧客を持つことが一般的です。
まずは「自社のサービス・プロダクトをちゃんと利用してもらうこと」、そして「解約にならないようにお困りごとを解決すること」が重要な役目になります。担当する顧客に、とにかく長くサービス・プロダクトを使ってもらうこと=契約を更新してもらうことがCSMが担う一番大きな任務になります。
その過程の中で、他の商品・サービスを追加で購入していただいたり、クチコミで他の見込みのお客様を紹介してもらえるような関係性も構築していけるとCSMとしても高い評価を得ることができます。
カスタマーサクセス マネージャー(CSM)の仕事をまとめると…
- 顧客がサービス・プロダクトを解約しないようにフォローすること。
- 顧客がサービス・プロダクトを活用して、当初やりたかったことを実現してもらうこと。
- 顧客に追加で新しいサービス・プロダクトを契約してもらうこと。
- 顧客に価値を感じてもらって、新しい見込みのお客様を紹介してもらうこと。
一括りに「カスタマーサクセスマネージャー」と言っても、そのあり方は企業によってまちまちです。ある企業では、最初のオンボーディングからずっと同じ顧客を担当するケースもあれば、顧客のフェーズごとに役割や業務を分業化(細分化)しているケースもあります(後述します)。
いずれのケースにしても、チーム内外の他メンバーと情報共有や連携を常に行いながら自分の担当顧客を支援していきます。営業と同じように顧客折衝のスキルはもちろん大事ですが、営業チームよりもさらにプロダクトに対する理解力が重要になります。
「マネージャー」とつくが管理職の「マネージャー」ではない
Customer Success “Manager” =「マネージャー」とついていますが、これはいわゆる管理職の「マネージャー」ではありません。ですので、「私はマネージャー経験はないんだよな」という不安は必要ありません。
あくまで「お客様のカスタマーサクセスを管理していく担当」という意味で「マネージャー」と呼んでいます。マネジメントレイヤーの「マネジャー」ではなく、例えば、芸能人に付き添う専属の「マネージャー」(スケジュール管理や交渉などをする人)の言葉をイメージするのが良いと思います。
カスタマーサクセス マネージャー(CSM)にはどんな人が向いているか
カスタマーサクセスのキャリアを歩んでいく上で、このCSMの経験は大きな基礎になっていきます。まだカスタマーサクセスを経験したことがないという方は、CSMを経験することはおすすめです。
- お客様の喜びや成功のために、できることを考えるのが好きな人。
- チーム内外の他のメンバーと協調しながら物事を進められる人。
- 単なる商品ではなくて、お客様の理想を実現するための解決策を提案できる人。
- 単発・短期の関わりではなく、長いスパンでお客様と関係構築できる人。
- 様々な事情や性格を持った相手に合わせて、適切なコミュニケーションを取ることができる人。
カスタマーサクセスマネージャーは、顧客と向き合ってサクセスに導いていくことが仕事になります。そしてもう一方では、チーム内でナレッジを共有しあったり、チーム外(特にプロダクト開発チーム)と連携しながら、サービスやプロダクトのバグや不具合に対処したりすることもあります。
顧客やチームと連携して物事を進めていくコミュニケーション能力に加えて、お客さんがつまずいている部分を効果的に取り除くセンス=「問題がどこにあるかにあたりをつける嗅覚」なども求められます。
カスタマーサクセス マネージャー(CSM)にはどんな人が不向きなのか
CSMにはこんな人は向いていないかもしれません。
- 自分の売上や利益をとにかく上げることが好きな人。
- 1発勝負・短期間勝負で顧客開拓していくのが好きな人。
- 営業や接客のあとのアフターフォローやアフターケアが好きでない人。
- 淡々と地道に同じことを繰り返していくことが好きでない人。
カスタマーサクセスマネージャー全般に共通して言えることは、「地道なアクションを積み重ねる」ことです。いわゆる営業職のように「契約・成約」という分かりやすい成功があるわけではないです。
また、カスタマーサポートのように「来た問合せを解決すれば良い」だけでもありません。顧客の状況を把握しながら、顧客に働きかけて動かしていくという胆力も必要です。そして顧客の動かし方にははっきりとした正解が最初からあるわけではないです。答えを自ら見つけていくということが苦手な人はカスタマーサクセスマネージャーの仕事は大変かもしれません。
カスタマーサクセス マネージャー(CSM)の仕事をするとどんなメリットがあるか
CSMの仕事をすると「既存のお客様を維持することがビジネスを営む上でどれほど大事なことか」またそれが「どれほど難しいものなのか」を身をもって理解することができます。
顧客の理解・解像度を深めていく方法や、顧客との長期的な関係性を築く仕組みや方法論を実践を通して身につけていくことができます。
また、カスタマーサクセスの考え方は、今はIT業界のSaaS領域で広まっていますが、今後はこの考え方が他の業界や他のビジネスモデルにも伝搬していくと考えています。
既存のお客様の契約を維持することや既存のお客様から新たに売上を作っていくことの経験は、転職市場においても価値が高くなるのではないかと想定しています。
カスタマーサクセス マネージャー(CSM)の職種・役割は、顧客の大きさとフェーズによってさらに分かれる
これまでカスタマーサクセスマネージャーという職種・役割について説明しましたが、カスタマーサクセスマネージャーは、担当する顧客の大きさとフェーズによってさらに種類が分かれていきます。
①エンタープライズ or SMB(Small and Medium Business)
CSMの中でも、担当する顧客群が、大規模企業であれば「エンタープライズ(エンプラ)」と呼ばれるようになります。
反対に、担当する顧客群が、中小企業であれば「SMB(えす・えむ・びー)」と呼ばれるようになります。
②オンボーディング or アダプション or アップセル(エクスパンション)
CSMの中でも、担当する顧客群のフェーズ(契約時点からどれくらいの期間が経っているか)によって職種の名前が変わります。
オンボーディング
契約直後から半年間くらいを担当するのがオンボーディングチームになります。セールスチームから顧客を引き継いだあと、カスタマーサクセスの中でも一番最初にお客様と関係を持つポジションです。
詳細はこちらの記事をご覧ください。
アダプション
オンボーディングが完了した顧客の、6ヶ月目から1年以降を担当するチームになります。オンボーディングでは、初期設定や基本的な利用を身につけた段階ですので、そこからさらに機能を活用してもらえるように支援・フォローする担当になります。
詳細はこちらの記事をご覧ください。
アップセル・エクスパンション
既存顧客に対して、他の機能やサービスを契約いただけるようにセールス的なアプローチを取るチームになります。
このアップセル・エクスパンションの役割は、CSチーム内で持つ企業もあれば、セールスチームに持つ企業もあったりします。
詳細はこちらをご覧ください。
まとめ
カスタマーサクセス マネージャー(CSM)について理解していただけたでしょうか。
CSMと一括りにいっても、今現在は様々なCSMの職種が生まれています。
本記事で取り上げた区分けはあくまで基本的な例です。その企業のフェーズによってどこまで分業化されているか、どれくらいの期間で分けられているかは変わります。
ぜひ各社のCSMポジションがどのような体制に分かれているかを意識して見てみましょう。